冷静に見る

『もっと早く病院行けば良かった』

何度か聞いた言葉だが、これがホンネなんだろう。
いつも明るく振舞っているが、心の奥底ではもっと早く病院に行かなかった事に相当後悔しているのだろう。

しかし、病気というのは非常に不条理なものだ。
特に贅沢な暮しもせず、ただ毎日家事をこなしてくれて
肝心の夫は人の風上にも置けないやつで
そんな中でも息子である僕に対して色々としてくれて

何一つ悪い事なんてしていない母を、病気は何事もなかったかのように蝕んでいく。



父が母に対して言った言葉の一つで、恐らく一生許せないものがある。
『俺に依存するのやめたら?』

僕が何度も母に病院に行くよう説得し、ようやく重い腰を上げようかという時に出た言葉だ。
母も母で、気にせずに行けば良かったものを、行かなかった。

今になって看病したふりをしている彼だが、ここまで病状が悪くなるまで放置したことの責任は
彼のその言葉にも多分にあると考える。

更にはこの期に及んで、頭の弱い女に現をぬかしてそれを正当化しようとしている。

こんな人でなしの血が自分自身にも流れてるという事実を考えただけで吐き気がする。



なんて考えてもしょうがないのは分かっている。
今はただ、残された少ない時間を限りなく後悔しないように一日一日大切に共有していく。

それしかすることはない。